IPOコンサルタントとは?業務内容や必要なスキル・資格、将来性やキャリアパスを解説
更新日:12月23日

企業が株式上場(IPO)を目指す場合、また上場した後に専門的な知識やスキルが必要となる場合、サポートを提供するのがIPOコンサルタントです。
今回の記事では、IPOコンサルタントをこれから目指したい方のために、IPOコンサルタントの業務内容やなるために必要なスキルと資格、年収、将来性やキャリアパスについて解説します。IPOコンサルタントになる方法や向いている人についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
IPOコンサルタントとは

IPOコンサルタントとは、IPOに関する専門的な知識や経験を豊富に持つコンサルタントです。株式上場のためには、監査法人によるショートレビュー、取締役会・株主総会の開催・運営、主幹事証券会社の選定や引受審査・証券取引所の上場審査といったプロセスを踏み、3年程度の準備期間が必要といわれています。IPOコンサルタントは、企業の株式上場(IPO)に必要な計画の立案と実行をサポートするのがおもな役割です。
IPOコンサルタントの種類

IPOコンサルタントは強みや得意としている業務内容に応じて、大きく以下の3種類に分かれています。
- 証券会社系コンサルタント
- 会計士系コンサルタント
- ベンチャー・スタートアップ系コンサルタント
それぞれの特徴や強みを解説します。
証券会社系コンサルタント
証券会社系コンサルタントとは、証券会社の引受審査や、取引所の審査に関する豊富な実務経験を持っているIPOコンサルタントです。
回答書や審査のための書類作成などの業務に強みがあり、審査をする側が求めているものに合わせた書類作成や、取引先目線での主幹事証券会社の引受審査、証券取引所の上場審査についてのアドバイスや実行ができます。主幹事証券会社の対応を判断する役割も持っています。
会計士系コンサルタント
会計士系コンサルタントとは監査法人出身のIPOコンサルタントで、内部統制や決済開示体制の整備を得意としているのが特徴です。財部諸表の作成において監査法人と企業をつなぐ役割を持ち、中立性が求められる監査法人目線でのアドバイスなどを提供します。
会計士系コンサルタントにも、IPOの準備に関する作業を担うコンサルタントと、企業の自律化支援を行うコンサルタントが存在します。
ベンチャー・スタートアップ系コンサルタント
ベンチャー・スタートアップ系コンサルタントとはベンチャー企業やスタートアップなどでIPOの実務を実際に経験したIPOコンサルタントです。実務経験があるため、準備で発生する負担や企業側の煩雑さなども理解しています。
IPOコンサルタントの業務内容

IPOコンサルタントは、IPOのための準備サポートと、上場後に問題のない適切な体制を整えることが役割です。IPOの準備は、上場を申請する「申請期」を起点として、1期前を「直前期(N-1期)」、2期前を「直前々期(N-2期)」、3期前を「直前前々期(N-3期)」に分けて行います。
具体的なIPOコンサルタントの業務内容を、上場申請準備の時期ごとに解説します。
直前前々期(3期前,N-3期)の業務内容
直前前々期にIPOコンサルタントが行う業務内容は以下の通りです。
- 事業計画の策定支援
- 資本政策の策定支援
- プロジェクトチームの編成支援
- 内部統制の整備
- ショートレビューの対応支援
- 監査法人の選定支援
- 主幹事証券会社の選定支援
- 各種関係機関の紹介(証券会社、監査法人、証券印刷会社、弁護士など)
直前々期(2期前,N-2期)
直前々期にIPOコンサルタントが行う業務内容は以下の通りです。
- 利益管理制度の整備支援
- 業務管理制度の整備支援
- 組織運営体制の整備支援
- 会計制度の整備支援
- 特別利害関係等との取引解消、整備の提案やアドバイス
- 関係会社の整備支援
- J-SOXへの対応支援
- 会計監査への対応支援
- 主幹事証券会社、監査法人への対応
直前期(1期前,N-1期)
直前期にIPOコンサルタントが行う業務は以下の通りです。
- 経営管理体制の構築
- 事業計画・資本政策の見直し
- 市場の選定
- 申請書類の作成
申請期(N期)
IPO申請期にIPOコンサルタントが行う業務は以下の通りです。
- 主幹事証券会社による引受審査対応
- 定款変更支援
- 上場申請対応
- 証券取引所による審査対応
- 上場承認を受ける
IPOコンサルタントは監査法人や証券会社、証券取引所と上場申請企業とのやりとりを中立的な立場で俯瞰的に捉え、上場申請企業が適切なIPO準備を進めているかどうかを確認する役割を担っています。
IPOコンサルタントの年収

IPOコンサルタントの年収は求人サイトのリサーチ結果600~1000万円がボリュームゾーンです。未経験者の場合は300~400万円、企業の規模が大きいまたは役職に就くなどすると1200~1500万円も可能となります。
国税局が発表した令和4年度統計発表によると1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は461万円のため、IPOコンサルタントの年収が高いことが分かります。
IPOコンサルタントになるために必要なスキル

IPOコンサルタントになるために必要なスキルを解説します。
専門的な知識やスキル
株式上場を目指す際には書類作成、内部統制、取引所や証券会社の審査といった専門的な知識が必要な業務が多いです。これらを自社で行おうとすると多くの手間が発生するだけでなく、ミスが発生してしまうリスクもあります。IPOの専門家であるIPOコンサルタントは、専門的な知識やスキルを持って上場企業の株式上場の実現をサポートするのが役割です。
貢献意欲
株式上場を目指す企業が上場後も優良企業でありつづけるためには、企業自体も一定レベルまで昇華する必要があります。IPOコンサルタント自身が、企業を自分の力でサポートして優良企業まで育て上げる、というマインドを持っていればIPOに関連する業務にも意欲を持って取り組めます。
根気強さ
IPOコンサルタントは、書類作成や監査業務といったマニュアルに沿った定型的な業務に携わることもあります。コンサルタントは自分の成果が収入に結びつきやすい生産性の高い職業ですが、IPOコンサルタントの場合、定型的な業務もコツコツこなせる根気強さも求められるでしょう。
向上心
IPOコンサルタントはほかのコンサルタントと比較すると、定型的な業務を担う割合は多いものの、当然成果も収入に直結しています。年収アップや待遇改善のために自分で成し遂げる意欲や、IPOコンサルタントとしての成長を常に意識して業務を担うことが求められるでしょう。
コミュニケーション能力
IPOコンサルタントには、顧客や同僚、投資家といった幅広い人とやり取りをするため、コミュニケーション能力が必要です。IPOプロセスに関する情報を正確に伝え、チーム内で連携するためには、円滑なコミュニケーションが必須となります。
IPOコンサルタントになるために必要な資格

IPOコンサルタントになるために特定の資格は必須ではありませんが、資格を取得しておくことで自分のスキルの証明になり転職や独立に有利となることがあります。
IPOコンサルタントとして働くためにあると有利となる資格を解説します。
IPO・内部統制実務士資格
IPO・内部統制実務士資格とは、上場企業などに必要となる内部統制の構築・運用・評価や、コンプライアンス経営を理解している人材と認められる資格です。IPOと内部統制の全般に関する職務全般の基礎知識と実務を修得した方を認定する標準資格「IPO・内部統制実務士」と、IPOまたは、内部統制のそれぞれ「高度な専門職務」を修得した方を認定する上級資格「上級IPO実務士」、「上級内部統制実務士」からなります。
資格登録後は2年間が有効期間。期間内に資格更新講習会に参加し、所定の単位を取得することで有効期限を延長できます。合格率はおよそ70~80%と、難易度は低く取得しやすい資格です。
IPO実務検定試験
IPO実務検定試験とは、上場準備の実務を遂行するにあたって必要となる知識を総合的に取得していることを証明する試験です。CBT試験で、1万人を超える受験者数を誇ります。標準レベル、上級レベルとも合格率は60%程度で推移しています。
公認会計士
公認会計士は監査業務が行える唯一の国家資格です。公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格し、3年以上の業務補助等の実務経験を積む必要があります。その後、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受けて日本公認会計士協会による修了考査に合格、内閣総理大臣の確認を受けると公認会計士資格が取得できます。
公認会計士の合格率は短答式試験(1次試験)は15~20%、論文式試験(2次試験)は35~40%と難易度はやや高めです。IPOコンサルタントの求人の中には、公認会計士の資格を持っているとなお良し、としているものもあります。
IPOコンサルタントは仕事で何が求められるか?

IPOコンサルタントは、依頼された企業側へ業務を通じて付加価値を与えることが成果につながります。上場申請企業側がIPOコンサルタントに成果として求めていることを解説します。
コストの削減
IPOを実現するには財務や監査などに関する専門的な知識を持った人材が必要です。IPOを実現するための人材を外部から採用したり自社で育成したりする場合多くのコストがかかるものの、IPOに必要となる専門的な知識は一時的にしか必要になりません。
費用対効果が低いためコスト面で負担が大きくなる、またはIPOを諦めるといった企業も多いでしょう。IPOコンサルタントに依頼をすることで、育成コストをおさえつつもIPOを実現できます。
スムーズなIPOの実現
IPOコンサルタントは財務や監査、上場審査などの専門的な知識や経験を有しています。IPOコンサルタントに依頼することで、ミスなくスムーズなIPOが実現できるでしょう。自社内の人的リソースをIPO関連業務に割くことなく、コア業務に注視できるメリットもあります。
IPOコンサルタントになるには?

IPOコンサルタントになるための具体的な方法を解説します。
証券会社からコンサルファームへ転職、または独立
証券会社での勤務経験を積むことで、引受審査や取引所の審査に関する知識や実績を積むことができます。その後コンサルファームへ転職するか、独立してフリーランスのIPOコンサルタントを目指す方法です。
監査法人からコンサルファームへ転職、または独立
監査法人での業務経験を積んでから、コンサルファームへ転職するか、独立してフリーランスのIPOコンサルタントを目指す方法です。内部統制や決済開示体制の整備を得意とする会計系IPOコンサルタントを目指したいときに向いています。
企業でIPOの実務経験を積んでからコンサルファームへ転職、または独立
ベンチャー企業やスタートアップを含めた企業でIPOの実務に携わってからコンサルファームへ転職、または独立することでIPOコンサルタントを目指す方法です。
IPOコンサルタントに向いている人

IPOコンサルタントに向いている人を解説します。
分析力と論理的思考力が高い人
IPOコンサルタントは、企業の財務データを詳細に分析したうえで、IPOに向けた適切な助言を行う必要があります。複雑なデータから洞察を得る分析力と、合理的な意思決定ができる論理的思考力が高い人は、IPOコンサルタントの資質があると言えるでしょう。
使命感を持って仕事に取り組める人
IPOコンサルタントに向いている人は、クライアントの期待を超える成果を生み出す使命感を保ち続けられる人です。IPOを実現するには、専門知識を持って適切な対応ややり取りを行う必要があります。ミスなく確実に書類作成や審査への対応といった業務を行うことでIPOが実現できるでしょう。
責任感がある人
IPOコンサルタントは、上場申請企業のIPOを実現するために、依頼されたことをやり抜く責任感が必要です。特にIPOコンサルタントはほかのコンサル業務と比べて定型的な業務も多くやりがいなどが落ちてしまうかもしれませんが、与えられた業務をそつなくやり遂げる責任感のある人なら、IPO実現までの業務をスムーズに遂行できるでしょう。
IPOコンサルタントの将来性

ベンチャー企業やスタートアップからIPOを目指す企業も多いです。今後も株式上場を検討する企業が増えれば増えるほど、IPOコンサルタントの将来性は高くなると言えるでしょう。
IPOコンサルタントのキャリアパス

IPOコンサルタントのキャリアパスについて解説します。
CFOを目指す
CFOとはChief Financial Officerの略で、財務戦略の立案や実行を行う「最高財務経営者」のことです。IPOコンサルタントとしての実務経験を活かして、企業のCFO人材として活躍する道があります。
独立する
自分でIPOコンサルタント会社を立ち上げる、またはフリーランスの個人事業主となって活躍する方法です。自分の成果次第で多くの収入が得られる可能性がありますが、案件獲得の営業活動や付随する事務作業なども自分で行う必要があります。コンサルタント向けのエージェントサービスを利用すると、安定的な案件獲得につながる可能性があるでしょう。
IPOコンサルタントの独立後の案件獲得のためのエージェントサービスなら「POD」をぜひご検討ください。PODは、フリーコンサルタントのためのハイクラス案件紹介を行っております。高単価案件や上流案件に特化しており、リモート案件や長期案件も充実しています。85%の豊富な非公開案件取り扱いや、継続率90%を実現するサポート力の強さにも自信があります。IPOコンサルタントの案件獲得にも、ぜひご活用ください。
IPOコンサルタントに関するよくある質問

IPOコンサルタントに関するよくある質問を回答とともに解説します。
IPOコンサルタントは激務?
IPOを実現するには、証券会社から決められた期日を守りつつ業績と内部管理体制を整えて書類作成や審査対応などを進めなければいけません。複数の案件を併用している場合には激務になるかもしれませんが、自分のペースに合わせて案件を調整することも可能です。無理なく働けるIPOコンサルタントを目指すなら、ノルマのない企業に就職する、独立するなども検討してみましょう。
コンサルタントとして生産的な活動はできる?
IPOコンサルタントはIPOに向けた準備や実務が中心となるため、ほかのコンサルタントと比べると提案や戦略立案などの業務は少なく感じるかもしれません。ファームによってはCFOとしての戦略立案を提供しているところや、クライアントのニーズに応じて業務を柔軟に対応するところもあるので、IPOコンサルタントとして戦略立案などでも活躍できるでしょう。
まとめ
IPOコンサルタントの概要や業務内容、年収、必要なスキルや資格、なる方法について解説しました。IPOコンサルタントは株式上場を目指す企業が存在する限り、安定した需要が見込めるコンサルタントです。将来性が高くIPOコンサルタントとして経験を積むことで多くのキャリアパスもあります。自分らしく働けるコンサルファームへの就職や、安定して案件を獲得できるエージェントサービスを利用するなどして、収入面でも条件面でも納得できるIPOコンサルタントを目指しましょう。
