物流コンサルタントとは?業務内容や年収、必要な資格やスキルを解説
更新日:12月21日
製品や商品の調達から消費者の元へ届ける「物流」は、ビジネスモデルとしてだけでなく、消費者の日常生活を支える生活インフラとしての役割も担っています。市場ニーズの変化やグローバル化などの流れを受けて、物流やサプライチェーン上で多くの課題を抱える企業も多くなりました。
物流やサプライチェーンの最適化、効率化や課題解決を担うのが、物流コンサルタントです。
今回の記事では、物流コンサルタントの概要とともに、業務内容や年収について解説します。
必要な資格やスキル、よくある質問についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
物流コンサルタントとは
物流コンサルタントとは、企業や組織が持つ物流・サプライチェーン管理の課題を解決し、効率化やコスト削減を達成するためのサポートを行うコンサルタントです。物流やSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)に関する専門知識と経験を活用し、企業の物流戦略の最適化による業務効率の向上や競争力強化、顧客満足度の向上を実現します。
物流コンサルタントは企業の物流業務や工程を分析することで、隠れていた現状の課題や改善点を明確にし、最適な戦略やソリューションを企業へ提案します。
物流コンサルタントの仕事内容
物流コンサルティングの提供するサービス内容は多岐にわたり、代表的なものは以下の通りです。
- サプライチェーンの最適化
- 輸配送コスト削減
- 在庫管理の改善
- 各種プロセス改善
- デジタル化・IT化支援
製品や商品の調達から、顧客のもとへ届くまでの流れであるサプライチェーン全体の最適化を行うのも物流コンサルタントの役割です。
具体的には後続プロセスの無駄やボトルネック特定による物流工程の見直しやリスク管理の改善、輸配送ルートの最適化や輸送手順の最適化による輸送コストの削減、在庫管理システムによる在庫の適正化や在庫コスト削減などが該当します。
近年では業務効率化や物流DX推進のために、サプライチェーンの流れを一括管理する「SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)」の手法も多く取り入れられるようになりました。
物流コンサルタントは、SCMシステムやツールの導入支援やサポートなど、SCMに関するコンサルタントも提供します。
なお、物流コンサルタントの中でもSCMに特化したコンサルやサービスを提供する「SCMコンサルタント」も存在します。
物流コンサルタントの職種
物流コンサルタントの代表的な職種は以下の通りです。
- ロジスティクスマネジャー
- 購買・プロキュアメントマネジャー
- 需要予測・デマンドプランマネジャー
- 在庫管理
それぞれの職種が提供するサービスについて解説します。
ロジスティクスマネジャー
ロジスティクスマネジャーとは、在庫管理や梱包、検品、配送といったロジスティクスサービスの構築や改善提案を行うことで、効率的な物流サービスの提供をサポートする職種です。物流サービスの見直しや改善のために、製品・商品動向の分析、原材料調達から出荷までのサプライチェーンプランニング、輸出入、倉庫内オペレーションの設計といった幅広い分野のコンサルを提供します。近年、物流DX推進を受けて特に需要が高まっている職種です。
購買・プロキュアメントマネジャー
購買・プロキュアメントマネジャーとは、経営目標を達成するための購買プロセスを構築する役目を担っています。納入業者の選定や価格交渉、契約管理、購買ポリシーの策定から、物流プロセスや購買オペレーションの見直しまでを実行し、製品・商品特性を考慮した効率的な購買基盤を構築します。
需要予測・デマンドプランマネジャー
需要予測・デマンドプランマネジャーとは、幅広いデータの分析による需要予測を行い、物流やサプライチェーン上の戦略に活かす職種です。製品・商品やサービスごとの販売実績や原材料価格や為替の推移など、取り扱うデータは多岐にわたります。
データの分析結果によって行われた需要予測は、生産や物流、購買、営業の計画立案や戦略に導入されます。
予測精度は企業のコストや利益に大きく影響するため、需要予測・デマンドプランマネジャーには緻密かつ高い分析力が求められます。
在庫管理
在庫管理は、適切な在庫量を把握し、適正在庫の量と品質の維持につとめる職種です。在庫量のコントロールだけでなく、在庫品の破損や減耗、経年劣化から製品・商品を守り、品質を保つための提案も行います。
在庫管理の合理化、効率化や適正在庫の管理が実現できないと、売上機会の損失や顧客離れの原因となります。
在庫管理は需要予測と同様コストや利益と直結する職種のため、データ分析の結果に基づく適正な在庫量の決定が求められています。
物流コンサルタントの年収
大手求人サイトの調査によると、正社員や自営、フリーランスなども含めた物流コンサルタントの平均年収は750万円でした。ボリュームゾーンが600~800万円、大学新卒や未経験スタートなら300~400万円、役職クラスなら1,000~2,000万円の求人もあります。企業の規模別の年収目安は、中堅企業の年収は400~600万円、大手企業なら500~1,000万円です。
令和4年度の全産業での正社員の平均給与は523万円のため、物流コンサルタントの年収は平均よりも高いことがわかります。
出典:令和4年分民間給与実態統計調査|国税庁
物流コンサルタントの年収については以下の記事ででくわしく解説しています。
物流コンサルタントになるために有利となる資格
物流コンサルタントになるために特別な資格は不要です。ただし、あると業務上で必要となる専門的な知識やノウハウが身につく、以下のような資格は存在します。
- MBA
- APIC認定資格
- SCM検定
- 英語に関連する資格
それぞれの資格について解説します。
MBA
学位のひとつである「MBA(Master of Business Administration)」は「経営学修士」のことです。大学院の経営学修士課程やビジネススクールのMBAコースを修了すると取得できます。
MBAを取得する過程で、人的資源管理、財務会計、マーケティング、統計学、経済学などを学習できます。
企業の留学プログラムやオンラインコースを利用することで、仕事をしながらでも取得は可能です。難易度は入学試験の倍率で決まり、国内平均入試倍率は約1.9倍、入試倍率が高い大学院では4倍以上になる年もあります。
APICS認定資格
APICS(エピックス)はアメリカの団体「American Production and Inventory Control Society」の認定資格です。
「CPIM(計画・在庫管理)」「CSCP(サプライチェーン・プロフェッショナル)」「CLTD(ロジスティクス・輸送・流通)」から構成されており、SCMに関する体系的な知識を有していることの証明となります。合格率は70%と公式サイトで公表されていますが、問題文がすべて英語のため英語スキルによって難易度が変わるでしょう。
SCM検定
SCM検定とは、日本サプライチェインマネジメント協会(日本SCM協会)が認定する資格です。ロジスティクス領域に関する知識が問われ、資格を取得すると「物流コンシェルジュTM」の称号を得られます。1年以上のロジスティクス領域における実務経験、もしくは日本SCM協会指定の勉強会などへの参加が受験資格です。
英語に関連する資格
物流コンサルタントは、グローバル企業や海外に拠点を持つ日系企業からの依頼も多く、語学力が求められることもあるでしょう。TOEICやケンブリッジ検定など、国際的な英語力を証明できる資格を取得することで、グローバル拠点を持つ企業の物流コンサルタントに役立ちます。
物流コンサルタントに必要なスキル
物流コンサルタントに求められる主なスキルを解説します。
部門間の調整力
サプライチェーンの最適化には、製造、物流、販売といった多くの部門の密な連携が必要になりますが、それぞれで持つ目標や作業プロセスは異なります。物流コンサルタントには、部門の間に立って目標調和をしたり意見を取りまとめたりといった、調整を効率よく行う部門間調整力が求められます。異なる部門間での調整と連携を行うことで、サプライチェーン全体での成果につなげられます。
語学力
生産拠点や販売拠点が海外の場合は、英語をはじめとした語学力が求められます。英語に加えて中国やヨーロッパ・アジアの特定言語が理解できると、英語以外の母国語や公用語が使われている特定の企業にも重視されるでしょう。
プレゼンテーション能力
物流システムやサプライチェーンの最適化のためには、新システムやツールの導入、オペレーションの変更が求められることがあります。その必要性をクライアントに理解、納得してもらうためのプレゼンテーション能力が必要です。クライアントに導入の検討を促したり、コストについての理解を得たりといった、コミュニケーション能力の中でも、提案力や説得力といったプレゼンテーションにまつわる能力が重要です。
データ分析力
物流システムやサプライチェーンの効率化と最適化には、統計的手法や機械学習アルゴリズムなどを活用した大量のデータを分析する力が必要です。分析結果から有益な情報を抽出して、効果的な課題解決策を導き出すことで、クライアントの持つ物流領域での課題解決につなげます。
SCMに関する専門的な知識
SCM領域での課題を改善するために以下のようなSCMに関する知識が必要です。
- ロジスティクス
- リサーチ&デベロップメント
- プロダクト&マニュファクチャリング
- セールスマーケティング
- リバース など
ITシステムに関する専門的な知識
物流やSCMの自動化や効率化にITシステム導入が有効なことも多いです。物流コンサルタントには、ITシステムに関する専門的な知識も求められます。
物流コンサルタントになる方法
物流コンサルタントになる一般的な流れは、まず製造販売を手掛ける企業やSCM管理システムを事業としている企業に就職して物流やSCM領域で実践や経験を積みます。その後コンサルティングファームへ転職するか、フリーランスの物流コンサルタントとして独立するといった方法があります。
具体的な物流コンサルタントになる方法を解説します。
製造業や事業会社で経験を積む
まず製造業や事業会社といった物流やサプライチェーンに携わる環境で業務経験を積み、実践的な知識を身につけましょう。
生産拠点立ち上げ、生産管理、ロジスティクス実務経験などがあれば、物流領域における専門的かつ独自的なコンサルティングの提供に活かせます。
総合コンサルティングファームに就職する
具体的に物流コンサルタントを目指したいときには、総合コンサルティングファームに就職します。
たとえば物流コンサルティングも手掛ける総合ファームには、デロイト・トーマツやプロレド・パートナーズがあります。対応する業界や業務も幅広く、さまざまな実践的な経験が積めます。
ただし、総合コンサルティングファームへの就職は、ある程度のコンサルタントとしての経験が求められます。
求人サイトに登録する
求人サイトに登録し、コンサルタント向けの求人へ応募する方法です。空いている時間に求人探しや応募ができます。
ただし人気の求人は競争率が高いため、なかなか採用にいたらないこともあるでしょう。
転職エージェントを利用する
コンサルタント向けの転職エージェントを利用する方法です。自分の能力やスキルに合わせた案件の紹介が受けられるほか、面接日程の調整なども行ってくれます。ただし、条件の良い企業からのオファーを受けるには、コンサルタントとしての実務経験が必要です。
物流コンサルタントを目指すためにエージェントサービスの活用を検討しているなら「POD」がおすすめです。PODは、フリーコンサルタントのためのハイクラス案件を幅広く取り扱っています。高単価案件や上流案件に特化しており、リモート案件や長期案件も充実しているのが魅力です。85%を占める豊富な非公開案件の取り扱いがあり、継続率90%をほこるサポート力の強さにも自信があります。物流コンサルタントの副業案件獲得にも、ぜひご活用ください。
物流コンサルタントのキャリアパス
物流コンサルタントのキャリアパスとして考えられるのは以下の通りです。
- 物流コンサルタントとして役職を目指す
- フリーランスとして独立する
- PMOや経営コンサルタントになる
ひとつのファームに長く所属し多くの案件に携わることで、物流やSCMの独自性、専門性のある知識やノウハウが身につけられます。物流コンサルタントとして役職付きになるほか、独立してフリーランスになる方法もあります。物流コンサルタントは物流DXを導入している、または検討している企業も多く、今後も需要が見込まれます。
PMOや経営に携わる機会も多いため、別領域でのコンサルタントを目指す選択肢も得られるでしょう。PMOや経営コンサルティングは幅広い業種の企業に求められているため、PMOや経営コンサルタントを目指すことで、年収1,000万円に手が届く可能性もあります。
物流コンサルタントの良くある質問
物流コンサルタントに関する良くある質問を、回答とともに解説します。
物流コンサルタントは激務?
物流コンサルタントは、物流システムやサプライチェーンに携わるほかの部門や外部企業と連携を取りながら業務を進めていきます。そのためクライアントのスケジュールによっては、ほかのコンサルタントよりも激務になることがあるかもしれません。スケジュール調整を上手く行うことで、自分のペースに合わせて働くことも可能です。
物流コンサルタントに資格は必要?
物流コンサルタントになるために特別な資格は不要です。未経験からでも挑戦できますが、資格よりも実績やスキルが重要視されます。前述の資格を取得しておくと、自分の持つ能力やスキルの証明になるため、ファームへの就職や案件獲得へ有利になるでしょう。
物流コンサルタントにはノルマがある?
就職したコンサルティングファームによっては、売り上げ達成のための目標やノルマが設定されている場合があります。ノルマがあることでプレッシャーを感じたり、ノルマを達成できないために評価が下がってしまったりといったこともあるかもしれません。ノルマが気になる場合には、独立してフリーランスになる方法もあります。
まとめ
物流コンサルタントの概要や業務内容、なる方法や必要なスキル、資格について解説しました。物流やサプライチェーンの最適化や効率化のニーズが高まっていることを受けて、今後も物流コンサルタントは安定した需要が見込めます。自分のスキルや実力を発揮できるファームへの就職や案件獲得を目指し、エージェントなどを活用しながら物流コンサルタントを目指しましょう。