M&Aコンサルタントの仕事の概要、年収は?求められるスキルやキャリアパスも徹底解説
更新日:12月21日
M&Aコンサルタントは、企業の合併・買収に関して専門知識に基づき戦略的なアドバイスやサポートをするM&Aの専門家です。本記事では、M&Aコンサルタントの概要と似た職種との違い、年収、求められる資格やスキルの他、キャリアパスを解説します。
近年、国内における市場の成熟にともなう事業再編や、後継者不足による事業承継、企業のグローバル化などから、M&A件数が増えています。これにともない、需要が高まっているのがM&Aコンサルタントです。M&Aに際して、専門的な知見から戦略を立てアドバイスやサポートを行います。
本記事では、M&Aコンサルタントの概要や似た職種との違い、職種別の仕事内容、必要な資格を解説します。M&Aコンサルタントとして活躍するための方法や向いている人の特徴、その将来性やキャリアパスについても解説しますので、M&Aコンサルタントへの転職をお考えの方は参考にしてください。
M&Aコンサルタントとは?
M&Aコンサルタントとは、企業の合併や買収(Mergers and Acquisitions)に関する専門的なアドバイスや支援を提供する専門家です。クライアント企業がM&Aを成功させるための戦略立案から実行、統合プロセスまでをサポートします。
M&Aコンサルタントの仕事の概要
M&Aコンサルタントの主な仕事は、クライアント企業のM&Aプロジェクトを成功に導くことです。具体的には、M&A実施のための戦略の策定、対象企業の選定、候補企業との交渉支援、デューデリジェンス(Due Diligence、買収監査)の実施、そしてM&A後の統合支援(Post Merger Integration、PMI)など、多岐にわたる業務を担当します。
M&Aコンサルタントは企業の成長戦略を支援し、M&Aプロジェクトの成功に貢献する重要な役割を担っています。
M&Aコンサルタントと似た職種との違い
M&Aコンサルタントと似た職種に、経営コンサルタントや財務アドバイザー、法務アドバイザーがありますが、それぞれ役割や専門性が異なります。ここからは、それらの違いについて解説します。
経営コンサルタント
経営コンサルタントの役割は、経営全般に関するアドバイスを提供し、企業の戦略立案や業務改善を支援することです。
経営コンサルタントは企業における広範な経営課題に対応するのに対して、M&Aコンサルタントは特にM&Aプロジェクトに焦点を当ててサポートする点で異なります。
財務アドバイザー
財務アドバイザーの役割は、企業の財務戦略の立案や資金調達、投資計画に関するアドバイスの提供です。
財務アドバイザーは財務面に特化しているのに対して、M&AコンサルタントはM&Aの全プロセスを包括的にサポートする点で異なります。
法務アドバイザー
法務アドバイザーの役割は、企業の法務問題に関するアドバイスを提供し、契約書の作成や法的リスクを管理することです。
法務アドバイザーは法的側面に特化しているのに対して、M&Aコンサルタントは戦略、財務、法務など多岐にわたる分野を統合的にサポートする点で異なります。
M&Aコンサルタントの業務内容
M&Aコンサルタントの主な業務内容と流れは以下になります。
- M&A戦略の立案と策定
- デューデリジェンス(DD)の実施
- 取引交渉支援
- 統合支援(PMI)
ここからは、具体的な業務内容と求められる成果を解説します。
M&A戦略の立案と策定
M&Aコンサルタントは、クライアントとなる企業のM&A戦略を策定し、最適なM&Aの方向性を示します。具体的な業務内容は次の通りです。
- 市場調査と分析
- M&Aの目的と目標の設定
- 戦略的なM&Aプランの作成
クライアント企業に最適なM&A戦略を策定して他社との競争優位性を確立し、成長機会を最大化します。そのため、業務成果として、明確なM&A戦略と実行計画の立案、成功確度の高いM&Aプロジェクトの実現が期待されます。
デューデリジェンス(DD)の実施
M&Aにおいて買収対象企業の財務や法務、ビジネスリスクを詳細に調査・分析し、クライアントに報告します。具体的な業務内容は次の通りです。
- 財務諸表の分析
- 法務リスクの評価
- ビジネスモデルの検証
M&Aにおけるクライアント企業のリスクを最小限に抑え、適正な価格での買収を実現するのがデューデリジェンスです。詳細なデューデリジェンスの実行と報告書の作成、リスク評価と対策提案が成果として求められます。
取引交渉支援
M&Aの条件交渉をサポートし、クライアント企業の利益を最大化します。具体的な業務内容は次の通りです。
- 具体的な業務
- 交渉戦略の策定
- 交渉の進行管理
- 契約条件の調整
クライアント企業が有利な条件でM&Aを進める環境を構築し、取引の成功率を高めるために行われます。クライアント企業に有利な契約条件やM&Aの成功が成果として期待されます。
統合支援(PMI)
統合支援(PMI)とは、M&A後の企業統合プロセスを支援し、スムーズな統合を実現します。具体的な業務内容は次の通りです。
- 統合計画の策定
- 組織再編のサポート
- システム統合の管理
M&Aの実行後に、売り手企業・買い手企業を迅速に一体化させて、シナジー効果を最大化させることがM&Aコンサルタントの役割です。そのため、効率的な統合プロセスの構築や統合後の業績向上が成果として求められます。
詳細な業務内容は違えど、各専門分野でクライアント企業に対して高い価値を提供し、具体的な成果をもたらすことがM&Aコンサルタントには期待されます。
M&Aコンサルタントの年収
一般的なコンサルタントの年収は、経験やスキル、企業の規模、業績によって大きく変動します。
参考までに、大手コンサルティングファームでM&Aコンサルタントとして勤務する場合の平均年収は1,500万円~2,500万円といわれ、3,000万円以上にのぼることもあります。
一方、中小企業に所属する場合の平均年収は800万円~1,200万円であり、企業の規模や業績により変動します。
また、外資系企業に所属する場合はグローバルな案件を扱うため、平均年収も2,000万円以上と高い傾向にあります。
なお、フリーランスのM&Aコンサルタントであれば、手数料などがそのまま収入となるため、案件次第では大きく稼ぐことができます。
このように、M&Aコンサルタントの年収は職種や業務内容、企業の規模や業種によって大きく異なります。高い専門性と成果に応じた報酬が特徴です。
詳しくは以下で解説しております。
M&Aコンサルタントになるために必要な資格・スキルや経験
M&Aコンサルタントになるには、M&A関連の知見が必須です。具体的には、次の資格やスキル、経験を有していると、業務に役立ちます。
資格
公認会計士(CPA)
財務分析や企業評価に必要な知識を提供する公認会計士の資格は、M&Aにおける財務デューデリジェンスや企業価値評価で役立ちます。
弁護士資格
弁護士資格があれば、法的な契約書作成や交渉に必要な知識提供が可能になるため、M&Aにおける契約書の作成やレビュー、法的リスクの評価に役立ちます。
スキル
財務分析スキル
財務諸表の読み取りやキャッシュフロー分析など財務分析スキルを有していると、デューデリジェンスや企業評価価値を把握する際の財務諸表の読み取り、キャッシュフロー分析に役立ちます。
法務知識
法務知識もM&Aコンサルタントに不可欠です。特に、民法(契約法)や企業法の知識は、契約書の作成やレビュー、法的リスクの評価に活用可能です。
プロジェクトマネジメントスキル
プロジェクトの計画・実行・監視といったプロジェクトマネジメントスキルも習得しておくと良いでしょう。M&Aプロジェクトの進行管理や統合プロセスの管理に役立ちます。
コミュニケーションスキル
M&Aでは、クライアント企業との交渉や調整に際してコミュニケーションが頻繁に求められます。コミュニケーションスキルがあれば、交渉支援やクライアントとの関係構築が有利になるでしょう。
経験
金融業界での経験
銀行や証券会社といった金融業界での勤務経験は、資金調達や財務デューデリジェンスにおいて、M&Aコンサルタントの業務に役立ちます。企業の財務状況を詳細に分析することで、買収リスクを評価できるためです。
コンサルティング業界での経験
前職などで経営コンサルタントとしての勤務実績がある場合も、M&A戦略の策定や企業評価などの点で、M&Aコンサルタント業に応用可能です。
法務分野での経験
法律事務所での勤務などを通じて契約書の作成やレビュー、法的リスクの評価を実行した経験は、M&Aコンサルタント業でも活用できます。
このように、M&Aコンサルタントには多岐にわたる資格やスキル、経験が求められます。
M&Aコンサルタントの仕事で求められることとは?
M&Aコンサルタントの仕事で求められる主な内容は次の通りです。
- M&A取引の成功
- リスクの最小化
- 効率的な統合プロセス
- 戦略的なアドバイス
- 専門知識と経験
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
それぞれのどのようなことが求められるのか、その具体例を解説します。
M&A取引の成功
M&Aコンサルタントは、企業の合併や買収を計画通りに進めて、クライアントの目標を達成し、クライアント企業の成長や市場シェアの拡大、シナジー効果の実現を目指します。
リスクの最小化
M&Aにおいてクライアント企業が背負うリスクの最小化もM&Aコンサルタントの仕事です。例えば、デューデリジェンスを通じて潜在的なリスクを特定し、適切な対策を講じることで、買収後のトラブルを防いで、安定した経営を維持できるように努めます。
効率的な統合プロセス
M&A後の企業間の統合を円滑に進め、早期にM&Aによるシナジー効果を発揮させることもM&Aコンサルタントの役目です。統合後に企業の業績を向上させるだけでなく、従業員のモチベーションを維持し、退職を防ぐことも業務上の付加価値です。
戦略的なアドバイス
M&Aコンサルタントは、クライアント企業の長期的な成長戦略に基づいたM&Aの提案を提案します。いかにして競争優位性を確立するかを検討し、持続的な成長を実現するサポートを行います。
M&Aの専門知識と経験
M&Aコンサルタントは、クライアント企業が安心してM&Aを実行できるよう、信頼性の高いサポートを提供しなければなりません。そのため、財務、法務、経営戦略に関する深い知識と豊富な実務経験が求められます。
コミュニケーション能力
クライアント企業との円滑なコミュニケーションと関係者間を調整するためのコミュニケーション能力もM&Aコンサルタントに必要です。クライアントのニーズを的確に把握し、対応できれば、プロジェクトをスムーズに進行できるでしょう。
問題解決能力
M&Aプロジェクト中に発生する多様な問題に対して迅速かつ効果的に対応する能力も求められます。問題を解決できれば、プロジェクトの成功確度を向上でき、結果としてクライアントとの信頼関係も構築可能です。
このように、M&Aコンサルタントには、多岐にわたるスキルと経験を活かし、クライアント企業に対して高い付加価値を提供することが求められます。
M&Aコンサルタントとして働くための4つの方法
ここからは、M&Aコンサルタントとして仕事をするための方法を解説します。
大手コンサルティングファーム
BIG4と呼ばれる総合系コンサルティングファームでは、M&Aコンサルティングをはじめ、様々な分野のコンサルティングを提供しています。
BIG4とは、デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング、KPMGコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティングを総称した呼び名です。
これらの企業は世界各国に拠点を有しているため、グローバルな案件を扱い、豊富なリソースとトレーニングプログラムが充実しているのが特徴です。グローバルな視点でキャリアを積みたい人や体系的なトレーニングを受けたい人におすすめです。
M&A仲介会社
日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクなどのM&A仲介会社への就職もM&Aコンサルタントとして活動する方法の一つです。
これらの仲介会社では、中小企業のM&Aを中心に扱っているため、実務経験を積みやすい環境が整っているのが特長です。中小企業のM&Aに興味がある人や実践的な経験を積みたい人に向いています。
投資銀行
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、野村證券といった投資銀行も、大規模なM&A案件を扱っています。
業務を通じて金融知識を深められるため、金融業界でのキャリアを目指す人や大規模な案件に関わりたい人におすすめです。
フリーコンサルタントとして独立
コンサルティングファームやM&A仲介会社などの企業に所属せず、フリーランスのM&Aコンサルタントとして独立することも可能です。
近年、M&A件数が増加傾向にあり、コンサルティングファームやM&A仲介会社での経験を活かして独立する人も増えています。
ただし、独立当初は案件獲得に苦戦することもあるでしょう。独立後、コンサルティング事業が安定するまでは、マッチングサービスの活用がおすすめです。PODでは、フリーコンサルタント向けの案件紹介を行っています。M&Aコンサルタントとして継続的に案件を獲得したい人はぜひご登録ください。
M&Aコンサルタントに向いている人の特徴
ここからは、M&Aコンサルタントに向いている人の特徴とその理由を解説します。
M&Aコンサルタントに向いている人の特徴は、次の通りです。
分析力が高い人
M&Aプロジェクトでは、企業の財務状況や市場動向を詳細に分析する必要があります。データを正確に読み取り、適切な判断を下せる能力を持つ人はM&Aコンサルタントに向いているといえるでしょう。
コミュニケーション能力が優れている人
コミュニケーション能力が優れている人もM&Aコンサルタントに向いています。なぜなら、M&Aでは、クライアントや他の専門家との連携が重要であり、交渉やプレゼンテーションを通じて、相手を納得させる必要があるためです。
問題解決能力が高い人
M&Aプロジェクトでは予期せぬ問題が発生することが多いため、迅速かつ効果的に問題を解決できる能力が高い人に適しています。
ストレス耐性がある人
M&Aは高額な取引が多く、コンサルタント業をこなすには相応のプレッシャーがかかります。ストレスに強く、冷静に対応できる人に向いている仕事です。
チームワークを大切にする人
M&Aプロジェクトを成功させるには、クライアントや他の分野の専門家など多くの人と連携して仕事を進めなければなりません。そのため、協調性があり、チームの一員として貢献できる人が向いています。
M&Aコンサルタントのキャリアパス
M&Aコンサルタントの代表的なキャリアパスは次の4つです。
- 新卒や未経験からのスタート
- 業界内転職
- 異業界からの転職
- 関連職種への転職
ここからは、それぞれのキャリアパスについて解説します。
新卒や未経験からのスタート
新卒や未経験からM&Aコンサルタントを目指すなら、大手コンサルティングファームやM&A仲介会社の新卒採用プログラムに応募する方法がおすすめです。
インターンシップやトレーニングプログラムが充実しているため、実務経験を積みながらアソシエイトからシニアアソシエイト、マネージャー、ディレクターへと昇進が期待できます。将来的には独立も視野に入れられるでしょう。
業界内転職
既にM&A関係の業界に携わっている場合は、現職での実績を活かして同業他社への転職や社内異動を検討することも効果的です。より高いポジションや新しいチャレンジを求めて転職することで、キャリアアップを図れます。
異業界からの転職
現在、M&Aの異業界で働いている場合は、転職エージェントを活用してM&A業界に特化した求人を探す方法がおすすめです。自分の強みや経験を活かせるポジションを見つけて、M&Aコンサルタントとしてのキャリアをスタートできます。
関連職種への転職
既にM&A仲介会社などでの勤務経験がある場合は、戦略コンサルタントや財務コンサルタント、投資銀行業務などに転職するのも一つの方法です。多様な経験を積むことで、幅広いキャリアオプションを持てるでしょう。
このように、M&Aコンサルタントには多様なキャリアパスがあるため、市場の需要に応じてスキルを磨きながらキャリアを築いていくことができます。
M&Aコンサルタントに関するよくある質問
M&Aコンサルタントとして働くことに興味を持っている方々からは、多くの共通した疑問が寄せられます。以下に、よくある質問とその内容を説明します。
M&Aコンサルタントは激務ですか?
M&Aコンサルタントの仕事は一般的に「激務」とされることが多い職種です。
特に、取引が佳境に入る時期や、デューデリジェンスを含む各フェーズでの突発的な問題対応などは集中的に働く必要があり、長時間労働が発生しがちです。具体的には、クライアントの緊急事項への対応や、タイムラインが厳しいプロジェクトにおける迅速な意思決定が求められます。クライアント企業のビジネスニーズに合わせて柔軟に働く必要があるため、激務であることは理解しておきましょう。
どのようなスキルが必要ですか?
M&Aコンサルタントには、財務分析スキル、法務知識、交渉力、プロジェクト管理能力、業界知識が必要です。また、多様な背景を有するクライアントとコミュニケーションを取る能力や、契約交渉の場で相手側の意向を的確に捉えるスキルも重要です。グローバルなM&Aでは、多文化に対応することも要求されるケースもあります。
仕事の流れはどのようなものですか?
一般的なM&Aプロセスは、M&A戦略の策定、ターゲット企業の選定、デューデリジェンス、交渉、契約締結、そして統合プロセスであり、M&Aコンサルタントはその支援を行います。
各ステージで異なるスキルセットが求められ、例えば戦略策定では分析力、交渉ではソフトスキルが重視されます。各フェーズの関係者間での密接な連携がプロジェクトの成功に不可欠です。
どのようなキャリアパスがありますか?
M&Aコンサルタントのキャリアパスには、新卒や未経験からのスタート、業界内転職、異業界からの転職、関連職種への転職があります。大手コンサルティング会社やM&A仲介会社ではアソシエイトからスタートし、シニアアソシエイト、マネージャー、ディレクターへの昇進が可能です。また、事業開発部門のリーダーシップポジションや独立によってコンサルティングサービスを提供するキャリアも考えられます。
なお、M&Aコンサルタントとしての経験は他業界へのキャリアチェンジにも応用できます。特に金融機関や法律事務所での役職も視野に入れることが可能です。
まとめ
M&Aコンサルタントとは、企業の合併や買収に関する専門的なアドバイスや支援を提供する専門家です。具体的な職種には、M&A戦略コンサルタント、デューデリジェンスコンサルタント、交渉支援コンサルタント、統合支援コンサルタントがあります。
M&Aコンサルタントとして活動する主な方法は、大手コンサルティングファームやM&A仲介会社などへの所属が主流です。実績を積むことで独立すれば、自身の強みを生かした働き方ができるでしょう。