小売コンサルタントとは?将来性や年収、業務内容、必要なスキルや資格、なる方法を解説
更新日:12月21日
小売業で発生する販売や在庫管理といった業務の最適化や改善、効率化、課題の解決を目的としたコンサルティングを提供するのが、小売コンサルタントです。特に近年小売業をとりまく課題を解決するために、小売コンサルタントの需要が高まっています。
今回の記事では、小売コンサルタントの概要や似ている職種との比較、年収や業務内容に加えて、必要なスキルや資格、小売コンサルタントになる方法を解説します。これから小売コンサルタントを目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
小売コンサルタントとは
小売コンサルタントとは、流通の流れの中での卸業から仕入れた商品を店舗などで消費者へ販売する「小売」の分野でのコンサルティングを行う人材のことを指します。
小売コンサルタントの役割
小売業の企業が市場競争の激化や消費者のニーズの変化に適応し、持続的な成長を実現するためには業務の効率化、人材や顧客へのアプローチの最適化が必須となります。
小売コンサルタントは、企業の業績や売上向上、競争力の強化を目的とした提案や戦略を行うコンサルタントです。
小売コンサルタントと似ている職種との違い
小売コンサルタントと似ている物流コンサルタントと流通コンサルタント、ECコンサルタントとの違いを解説します。
物流コンサルタントとの違い
物流とは生産者、生産元から物流倉庫、店舗などまでのモノの所有権が消費者になっていない状態におけるモノの流れを指します。
物流コンサルタントは、流通の中でも生産者から倉庫、店舗までモノを届ける物流の工程や業務、人材などの最適化を担う人材のことです。
物流コンサルタントについては以下の記事でくわしく解説しています。
流通コンサルタントとの違い
流通とは、製造元や生産者から消費者のもとへモノを届けるまでのすべての流れのことであり、前述の物流や小売は流通の中に含まれます。
流通コンサルタントは、物流や小売を含めて流通の流れや仕組みの最適化、業務効率化のための戦略や施策立案を行う人材のことです。
流通コンサルタントについては以下の記事でくわしく解説しています。
ECコンサルタントとの違い
ECコンサルタントとは、EC事業やECサイトの最適化や利益向上、集客のための戦略や施策を立案する人材のことです。小売コンサルタントの業務範囲が実店舗だけでなくECサイトも含まれるのに対して、ECコンサルタントはECサイトに限定されています。
ECコンサルタントについては以下の記事でくわしく解説しています。
小売コンサルタントの将来性
小売業は実店舗での顧客への商品販売だけでなく、競合他社との競争力を高めるために以下のような業務や施策も求められています。
- オンラインとオフラインとの融合
- 決済方法の多様化といった顧客ニーズへの対応
- AIを駆使したパーソナライズされた顧客体験の提供
- SNSを活用したマーケティング
さらに、人手不足や物価上昇、環境問題への対応といった課題にも小売業は直面しています。顧客のニーズに応えつつ、課題を解決し将来も小売業起業が生き残っていくために、小売コンサルタントが求められているといえるでしょう。
小売コンサルタントの年収
求人サイトのリサーチ結果より400~1,600万円と幅が広くなっています。なお年収は実務経験や就業先によって変動します。
- 中小規模コンサルティングファーム:500~1,000万円
- 大手コンサルティングファーム:600~1,600万円
- 専門商社(未経験から可能):400~800万円
小売コンサルタントの業務内容
小売コンサルタントが担う具体的な業務内容を解説します。
収益最大化への戦略
小売コンサルタントは、競争が激しく市場ニーズの変化も早い小売業界にて、企業が収益を最大化し、業績を向上させるための戦略を業界の専門知識と経験を活用して提供します。
具体的には市場分析や顧客動向を把握し、収益源の最適化や新たな収益モデルの構築をサポートする役割を担っています。
顧客満足度の向上への戦略
日々変化する顧客ニーズや要求に対応するために、小売コンサルタントは顧客のニーズや思考を理解したうえでのサービスや製品の提供方法の提案といった、顧客満足度向上のための施策や戦略を提案します。
顧客満足度を向上させることで、顧客ロイヤルティの向上や競合他社との差別化につなげられるためです。
コスト削減や生産性向上への提案
在庫管理や物流や業務プロセスの最適化の戦略や提案を行い、企業のコスト削減や生産性の向上を実現します。
ITテクノロジーの活用とデジタル化への対応
以下のような小売業界でのITテクノロジーやデジタル化支援として、CRM導入やクラウドへの移行といったサポートを提供します。
- サプライチェーンの最適化
- リアルタイムプラットフォームの構築
- 需要予測へのAI活用
- 大手物販社の次期店舗オペレーションの検討支援
- オムニチャネル戦略実現
- AIを活用した顧客体験価値向上の仕組み実現
- 時間帯別の精緻な需要予測と連動したサプライチェーンの最適化
- 店舗オペレーションの自動化・簡素化
- オンラインと店舗の融合や顧客接点の高度化・CRM
- 小売業向けリアルタイムプラットフォームの構築と提供
財務コンサル
小売業における財務状況の分析と診断や企業の財務健全性やリスクの評価、資金調達の最適化や投資戦略の策定、財務プロセスの改善など、財務面での課題解決につながる財務機能全般に関する戦略的なアドバイスや支援を実行します。
組織改革・働き方改革コンサル
激化する市場競争や顧客ニーズ、市場ニーズの変化に柔軟に対応できるための以下のような組織や働き方への改革コンサルも行います。
- 企業の組織構造やプロセスの見直し
- 迅速かつ効率的な意思決定ができる組織への見直し
- デジタル技術の活用による組織改革
- 柔軟な勤務制度導入などワークスタイルの改善
顧客向けマーケティング・ブランディング戦略立案・支援
顧客向けマーケティングやブランディングの戦略立案や支援を行います。
- 目標顧客層の特定
- 競合分析
- 市場調査
- プロモーション戦略
- 価格戦略
- 販売チャネル戦略
- 広告キャンペーンの企画・実施
- デジタルマーケティング戦略の実行
- 販売促進活動の支援 など
小売企業向けデータ活用や分析支援
顧客の行動や市場動向を正確に把握するために、以下のようなデータ収集と分析支援を行います。
- データ戦略の策定
- データ収集・整理・統合・保護支援
- データ分析の実施
- 市場動向や競合他社の動向などの外部データの活用
- データ分析による戦略立案
小売業採用・育成支援
以下のような小売業界における人材の採用や育成支援も行います。
- 採用戦略の策定
- 適切な求人広告の展開
- 採用チャネルの選定
- 候補者の選考プロセスの改善
- 面接の訓練
- 企業ブランドイメージ向上のためのプロモーション
- 社員研修プログラムの開発
- キャリア開発支援
- スキルアップのためのトレーニングや教育制度の整備
- キャリア相談のサポート
- モチベーション向上の取り組み
- 福利厚生プログラムの導入 など
小売コンサルタントの種類
小売コンサルタントは、提供する支援内容、所属する企業や働き方によって以下の3種類に分かれます。
- 総合型
- 流通総合型
- 小売専門特化型
それぞれの特徴を解説します。
総合型
小売コンサルとともに、経営コンサルも提供する戦略系・総合系コンサルティングファームの流通コンサルタントです。コンサル業務は企業・事業戦略立案から基幹システム構築や流通エコシステムの構築まで多岐にわたります。
大手コンサルファームが該当するタイプとなっており、クライアントは規模の大きな企業、大手企業、グローバル企業が多いため、安定した需要が見込まれます。
代表的な企業:マッキンゼー、BCG、アクセンチュア、PwC、デロイトトーマツ、アビーム
小売総合型
小売や流通に強みを持つ中堅コンサルティングファームのコンサルタントです。流通+小売かつ独立性の高いコンサルティングを提供します。小売総合型は、流通・物流企業の子会社が多いです。
代表的な企業:日通総合研究所、SBS東芝ロジスティクス、丸紅ロジスティクス、船井総研ロジ
小売専門特化型
中小ファームや企業、フリーランスなどのコンサルタントです。小売分野でも得意とする分野や市場を限定し、強い専門性を持っています。オーダーメイドの対応を行っているなど柔軟性が高いのが特徴です。
小売コンサルタントに求められるスキル
小売コンサルタントとして活躍するために必要なスキルを解説します。
小売業界の専門知識
クライアントの課題を解決するためには小売業界の専門知識が必要です。
ファームには今までのノウハウが蓄積されていますが、小売業界の変化するスピードの速い市場のニーズ、顧客ニーズや要望に対応するためには、小売コンサルタント自らが業界情報を収集し、必要な情報をすばやくインプットすることも重要です。
コミュニケーションスキル
コンサルタントは、クライアントと対等の立場で戦略や問題の解決策を提案します。
クライアントの意見を聞いて、納得を得ながら戦略や施策の提案を行うため、自分の意見を一方的に伝えるのではなく、クライアントの意見や考えていることをよく聞いて、クライアントと一緒になって解決策や戦略・方針を立案する姿勢が重要です。
小売コンサルタントは店舗オペレーションの見直しや改革、人員配置や在庫業務の適正化といった、既存のスタイルに改革が求められることも多いため、クライアントの同意や信頼を得ながら進めるためのコミュニケーションスキルは必須といえるでしょう。
クライアントだけでなく小売に携わるほかの関係者(運送業者、倉庫業者、卸業など)と接触することも多いため、現場の人材と円滑にコミュニケーションを取るうえでもコミュニケーションスキルは求められます。
現状把握力
過去に蓄積した知識や経験や想像力のみで提案や課題解決を行うのではなく、プロジェクトごとに市場や企業・組織内にある事実・事象などを正確に調査して、把握する力が必要です。
発生している課題に対して原因を正確に判断したうえで、適切な戦略を立てて問題を解決するには、小売に関する現状のシステムの状況や業務フロー、経営や業務などにおける課題、を正確に把握して分析する力が必須となります。
ロジカルシンキング
物事を論理的に捉える思考力であるロジカルシンキングは、コンサルタントに求められる代表的な必須のスキルです。
小売コンサルタントの場合、消費者への販売行動から在庫管理、販売業務といった多岐にわたる工程を整理して、課題や原因を特定する必要があります。
ロジカルシンキングを発揮することで、店舗や在庫管理といった業務ごとに散在する情報を漏れなく捉えて分類・体系的に整理することで全体を俯瞰しやすくなり、課題の発生箇所や原因の特定にもつながるでしょう。
問題解決力
小売コンサルタントは、各種調査や仮説に基づき、店舗販売行動やテンポマネジメント上で発生している課題や問題を解決することが求められています。
戦略立案、施策実行計画を練るためには問題解決力は必須です。コンサルタントはただ戦略や施策を立案するだけでなく、成果も求められます。
進捗管理スキル
進捗管理スキルも、プロジェクト推進のために必須となるスキルです。設定した各フェーズにおけるタスクやプロジェクトメンバーの開発等の各進捗を逐次把握しておきます。
特に小売業務の適正化などスピード感が必要なプロジェクトは遅延は厳禁です。プロジェクトの遅延を招く要因が出てきた場合、小売コンサルタントは素早く対処方法を考え、手を打たなければいけません。
すでに立てたスケジュール通りの進行が難しい場合は、リスケジュールすることをクライアントに相談して、承認を得る役割を担います。
小売コンサルタントとして活躍するためにおすすめの資格
小売コンサルタントになるためには、特定の資格は必要ありません。ただし、資格を取得しておくことで自分のスキルや技術、知識の証明になるため、積極的に取り組むといいでしょう。
- 中小企業診断士
- 販売士
- ロジスティクス管理
- ロジスティクス経営士
- 物流技術管理士
中小企業診断士
中小企業診断士とは「中小企業支援法」にもとづいて経済産業大臣が登録する国家資格です。組織の再生や健全経営のアドバイスができます。企業経営のための経営コンサルタントが取得する資格ですが、小売コンサルタントの店舗経営戦略にも有効です。
合格率は1次試験、2次試験ともに20%前後、試験全体での合格率は4%前後と難易度は高めですが、取得しておけば将来的に経営コンサルタントを目指したいときにも役立つでしょう。
販売士
日本商工会議認定の民間資格です。商品に関する豊富な知識と高い販売スキルが身につくため、現場の販売員が取得するイメージがありますが、商品の仕入れ管理や在庫管理、売り場の統括、人材育成やマーケティング分析に関する知識の証明になります。
また、販売士1級を取得すると、店長・経営者クラスの経営能力とマネジメント能力があると認められます。
2級と3級の合格率は50%~60%程度ですが、1級の合格率は約20%と難易度は高めです。
ロジスティクス管理
ロジスティクス管理は、中央職業能力開発協会が実施する検定試験で、ロジスティクスの企画や管理など業務遂行に必要な知識の証明となります。取得することで小売に加えて流通領域でのコンサルにも役立つでしょう。
ロジスティクスを含む8分野・4レベルで構成される試験のうち、自分の職務やレベルに合わせて試験を選んで受験できます。
ロジスティクス管理は2級または3級があります。2級、3級ともに合格率は60%台と難易度はやや低めです。
ロジスティクス経営士
ロジスティクス経営士は、新たなサービスや事業企画、戦略立案と実行などの能力を証明できる資格です。ロジスティクスの役割を経営視点で捉え、各機能を総合的に構築、実践できます。
受講資格として、3年あるいは5年の実務経験と指定の資格取得が必要です。約3ヵ月の資格認定講座にて、講義やケーススタディ、グループミーティングを通して網羅的に知識と実践力を身につけ、講座終了後に論文試験、面接試験で合計80点以上を取得すれば認定を受けられます。
物流技術管理士
物流技術管理士とは、物流技術者や管理者に必要な物流・ロジスティクスに関する専門知識やマネジメント技術を証明できる資格です。倉庫やヤードにおける荷物の保管や荷役作業、流通加工、管理者に必要な物流機能マネジメントや情報システムの管理業務などの知識取得につながります。
受験資格として、2年前後の物流実務経験あるいは物流技術管理士補の資格が必要です。実務経験を持つ講師陣の元で、専門知識から応用まで幅広く学ぶ講義を受けて試験に合格すれば取得できます。合格率は70%と取得しやすいです。
小売コンサルタントになる方法
小売コンサルタントになるための方法を解説します。
小売コンサル会社の就職
小売コンサルを専門に行う会社へ就職して正社員として働く方法です。日通総合研究所、SBS東芝ロジスティクス、丸紅ロジスティクス、船井総研ロジといった、おもに親会社が物流・流通企業で子会社としてコンサル会社を設けている場合が多くあります。
自分の得意な分野を活かせる会社を選んで就職するのがおすすめです。
大手コンサルティングファームへの就職
さまざまな分野のコンサルを提供する総合コンサルティングファームへ就職する方法です。実務経験が長ければ大手のコンサルティングファームへ転職し、高収入も目指せます。
流通コンサル以外にも他分野へのコンサルへ転職するキャリアパスも考えられるでしょう。
フリーランスになり独立
ある程度小売コンサルタントとしての実務経験を積んで実績を残したら、フリーランスになり独立する方法です。
案件は自分で獲得しなければいけませんが、働き方によっては十分高収入を目指せるでしょう。働く時間や場所などを自分で決めたいときにもおすすめです。
正社員として働きながら副業
小売コンサルタントの副業をする方法です。正社員として働きながらECコンサルタントとしての仕事を副業として行います。案件を獲得する際には、コンサルタント専門のエージェントサービスを利用すれば、ライフスタイルに合わせた副業案件も見つけやすいでしょう。
たとえばPODでは副業向けの稼動率20~50%のECコンサルタント案件や、非公開案件も豊富に取り扱っています。
小売コンサルタントのキャリアパス
小売コンサルタントとして実績を積むと得られるキャリアパスを解説します。
経営コンサルタント
小売コンサルタントは、業務の効率化や工程の見直しといった小売の適正化のためのコンサル経験や、顧客や指標ニーズの分析や把握するスキルも身につけられます。
これらを活かして、企業の経営課題を解決する経営コンサルタントとしても活躍できるでしょう。
流通コンサルタント
小売コンサルタントから発展して業務範囲や対象を広げた、流通コンサルタントとしても活躍できます。
小売コンサルタントで培った小売に関する課題の解決スキル、コミュニケーション能力を活かし、流通に関する専門知識を身につけることで、小売だけでなく流通全体のコンサルをカバーできるようになるでしょう。
人事・組織コンサルタント
流通コンサルタントは、店舗や企業の人材育成や採用に関するコンサルを担当する機会もあります。教育や制度改革、働き方の改革などで培ったスキルを活かして、人事や組織コンサルタントとして活躍する事も可能です。
独立起業
小売コンサルは消費者ニーズの多様化や小売業界がかかえる環境問題や人手不足といった課題を解決するために、安定した需要が見込めます。経験や実績を活かして独立し、フリーランスとなったり起業したりといった道もあります。
まとめ
小売コンサルタントの概要や似ている職種との違い、業務内容や必要なスキル、資格、小売コンサルタントになる方法を解説しました。
小売コンサルタントは、今後も安定した需要が見込まれるコンサルタントです。流通コンサルタントや経営コンサルタントといった他業種を目指したり、独立したりといった将来性も高くなっています。
ぜひ自分のライフスタイルや希望年収に合わせて働ける小売コンサルタントを目指しましょう。